クイーンズ・ギャンビットは実話？物語の背景とモデルとなった人物

Netflixで大ヒットしたドラマ『クイーンズ・ギャンビット』は、天才チェスプレイヤーの少女・ベス・ハーモンが主人公の物語です。孤独と依存症に苦しみながらもチェスの世界で成り上がる姿が感動的に描かれていますが、この物語はフィクションです。

とはいえ、ドラマの中には現実のチェスの歴史や、チェス界で実在した人物を参考にした部分もあるため、まるで実話のようなリアルさが話題になっています。ここでは『クイーンズ・ギャンビット』がどのように現実と結びついているのかについて解説します。

『クイーンズ・ギャンビット』の原作小説

このドラマは、1983年に発表されたウォルター・テヴィスの同名小説を原作としています。テヴィスは他にも映画化された『ハスラー』や『地球に落ちてきた男』を執筆しており、孤独や挑戦をテーマにした作品で知られています。

『クイーンズ・ギャンビット』もまた、テヴィス自身の経験やチェス界のリアルな要素が反映されていますが、主人公ベス・ハーモンは完全な架空の人物であり、物語全体もフィクションとして構成されています。

テヴィスは自らも幼少期にチェスを学び、さらに薬物依存症に苦しんだ経験を持っています。こうした自身の体験がベスのキャラクター設定に影響を与えており、彼女の孤独や依存症がリアルに描かれている背景には、テヴィス自身の経験が投影されていると考えられます。

ベス・ハーモンのキャラクターには、実在のチェスプレイヤーであるボビー・フィッシャーやボリス・スパスキーといった有名なチェスマスターの影響が見られます。特に、フィッシャーの戦略的なプレースタイルや、チェス界での孤立感がベスに投影されています。

また、作中に登場するライバルのチェスプレイヤーや試合の設定も、冷戦時代のチェス界の競争を反映しており、チェスの世界に対するリアルな描写が特徴です。

実在の女性チェスプレイヤー、ノナ・ガプリンダシヴィリは、物語中で彼女の経歴が誤って表現されたとしてNetflixを訴えています。ガプリンダシヴィリは1960年代に実際に活躍したグランドマスターであり、ベスのキャラクターの一部に彼女の影響が見られると考えられています。

このように、作品の中で実在の人物や歴史が組み込まれていることで、あたかも実話のようなリアルさが生まれ、視聴者を魅了しているのです。

『クイーンズ・ギャンビット』は、ベスが挑むチェスの世界の厳しさや、女性が少ないチェス界での孤独感がリアルに描かれているため、多くの視聴者が「実話では？」と感じる作品になっています。

チェスの試合に臨むベスの緊張感や、彼女を取り巻く人々の描写が、細部にわたって丁寧に作りこまれているため、作品全体がまるで歴史的事実のような重みを持っています。

男性優位のチェス界で自分の才能を証明していくベスの姿は、ジェンダーの壁を越えた挑戦として視聴者に共感を呼びました。現実には同時代に活躍する女性チェスプレイヤーは少なかったものの、彼女のような存在がいたらという「仮想の物語」として成り立っているのが、この作品の奥深さです。

『クイーンズ・ギャンビット』は実話ではありませんが、ウォルター・テヴィスの原作や現実のチェス界の出来事、実在のプレイヤーを参考にすることで、フィクションでありながらもリアルさが際立つ作品となっています。

ベス・ハーモンというキャラクターを通じて、チェスの奥深さと孤独の中での闘いを描いた『クイーンズ・ギャンビット』は、現実とフィクションの境界を巧みに表現したドラマとして、多くの視聴者に愛され続けています。